
「医療機器メーカーへの就職は難しいのか?」業界を知らない人や、現役で技師をやっていて就職の難易度について気になる方も多いはず。今回、現役で医療機器メーカーで働く目線から医療業界への就職事情についてまとめていきたい思います。
医療機器メーカーの特徴は?
医療機器メーカーは医療現場で使用される機器・機材の販売を担う会社です。具体的には、一般撮影装置、CT、MRI、インジェクター装置、内視鏡、ペースメーカー、人工骨頭、カテーテルなどがあります。
多くの企業がBtoBであり、医療×工学の現場密着型ビジネスです。人の命に関わるため品質と安全の維持が重要とされ、長期で顧客(病院)と並走するのが特徴です。
市場面では、国内医療機器市場は2019〜2023年で年平均+4.0%で伸長しています(薬事工業生産動態統計ベース)。高齢化などで安定需要はある一方、診療報酬や投資抑制の影響も受けて国内市場では競争が激しくなっている業界でもあります。
年収レンジは職種と企業で幅があり、情報サイトの集計では平均約500万円前後〜上位企業で高水準までばらつく傾向があります。総じて同年代の国内平均よりやや高めという結果も示されています。
BtoB企業のため一般的なイメージがつかず知名度は低めの業界。しかし、「隠れ優良企業」が多いとされているのもこの業界の特徴です。
以下で詳しく解説していきます。
医療機器メーカーは「優良企業」が多いのか?
openworkなどの口コミサイトを見ると、以下の特徴があります。
・給与水準が高め(1台単価が大きい企業ほど高い。職種では営業職が高め)
・海外進出している企業が多く、成長規模が大きい
・新卒では研修制度がしっかりしている会社が多い(独特な業界なので教育基盤を整える傾向強い)
営業職は給与が高い反面、残業時間が多くなる傾向があります。顧客の医者などが夕方のアポイントになるケースや遠方への移動がある場合もあるからです。
働き方改革の影響を受けて、リモートやフレックスを設けている企業もあり、医療に関わりたいという思いのある人材にはチャンスがあります。
結論:優良企業は確かに存在するが、全社がホワイト企業とは限らない。職種・部門差もあるため、会社→職種での実態を調べておくと良いです。(後述の「やめとけ」と言われる理由も参照)
就職難易度は?
難易度の全体感
・大企業は応募者が多く倍率が高い。22卒近辺の調査でも従業員5,000名以上の大企業求人倍率は0.37倍(=狭き門)と、小さめという記載もあります(全体1.58倍に対し)。名の知れた医療・精密大手はこの文脈に入る傾向です。
参考:東洋経済オンライン
・人気ランキングでは精密・医療機器枠は、ニコン、島津製作所、オリンパス等が上位。人気な企業は志望者が集中し、相対的に競争率が高くなります。(マイナビ2026卒)
参考:就職企業人気ランキング
「就職偏差値一覧」
| 【70】 アボットジャパン、日本メドトロニック |
| 【69】 富士フィルム(メディカルシステム事業部)、シーメンスヘルスケア、GEヘルスケア |
| 【68】 オリンパス、日本ストライカー、日本べクトン・ディッキンソン |
| 【67】 シスメックス、島津製作所、カーディナルヘルス日本 |
| 【66】 オムロン、日本光電工業、富士フィルムメディカル |
| 【65】 テルモ、フクダ電子 |
| 【64】 コニカミノルタ、日立ハイテク、キヤノンメディカルシステムズ |
| 【63】 スズケン、朝日インテック、オリンパスメディカルソリューションズ |
| 【62】 二プロ、マニー、アルフレッサファーマ、テルモ・クリニカルサプライ |
参考: 就職偏差値.com【公式】
見方のコツ
・”人気=自分に合う”ではない。職種相性が外れると就活も入社後も苦戦しがち
・”選考の型”は企業によって違う(英語力、適性、必要なスキル)
・採用人数と自分の強みが刺さる職業を照合する
「医療機器メーカーへの就職は難しい」と言われる理由
医療機器メーカーには人気ランキングにあがるような企業も多く募集人数が多くなりがちです。また昨今のヘルスケアブームにより新卒・中途問わず興味を示されている業界でもあります。
また、即戦力や専門性の要求が高まっています。特に中途採用では医療業界の知識があるかが問われるケースもあります。
外資企業だけでなく海外展開している国内メーカーも多いため、英語力を面接で質問されるという口コミも散見されます。
学歴フィルターはあるのか?
結論として、医療機器メーカーで一律の「学歴フィルター」はないようです。実際の募集要項では、職種により「学士以上」や「理系歓迎」「診療放射線技師などの国家資格歓迎」といった条件が示されるケースが多く、大学名で一律に足切りする旨の明記は見当たりませんでした。
参考:マイナビ2026

富士フィルムメディカルでは様々な大学からの採用を行っているようです。
また、個人の選考体験談やレポートでも、幅広い大学からの内定実績が確認でき、「学歴フィルターは感じない」との記述が複数見られます。たとえば日本光電工業の内定者レポートでは、地方国公立・MARCH・私大など多様なバックグラウンドが見られるとの指摘があります。専攻や臨床経験、職種適性(アプリ・営業・サービス・薬事/QAなど)での評価が重視されやすいと考えられますです。
医療機器メーカーに向いている人
「医療機器メーカーに向いている人」、以下の特徴を持っています。
・医療やヘルスケア分野に幅広く貢献し、人の役に立ちたいという思いがある
・専門的な知識や経験を深めていきたい
・高い倫理観や責任感を持つことに抵抗感がない
・医療業界特有の規制や安全文化を理解できる
・英語の読み書きが苦にならない
医療機器メーカーでの仕事は顧客との信頼関係が重要となります。中長期的な視点で製品販売を行っていき、この「メーカーにして良かった」と言われる関係構築が求められていきます。なので営業といえど体育会系の人ばかりではありません。様々なタイプの人がいて様々な顧客に対応できるようにしている会社がほとんどです。

医療機器メーカーは「やめとけ」と言われる理由
口コミサイトには「医療機器メーカーはやめとけ」という声もありますが、以下の背景があります。
・医療業界独特のルールがある(著名な先生の宛名は”〇〇先生 御侍史”にする等、、)
・専門的な内容が多く、知識習得に努力が必要
・夕方にアポイントが取れると、残業時間が増える傾向にある
・規制産業のため、文書や手順、記録の必要性も問われる
つまり、向き不向きの問題であり、上記の特徴が性格的に合わないと感じる人にとってはやめておいた方が良い業界と言えます。(どの業界にも独特な風習はあるかと思います)
業界年収は?
上場メーカーの有価証券報告書を見ると平均でも年収700万~1000万円前後になりそうです。
例えばいくつか下記にまとめてみます。
テルモ:平均755万円(2024年3月期)
シスメックス:平均913万円(2025年3月期)
オリンパス:平均1046万円(2025年3月期)
日本光電工業:平均925万円(2025年3月期)
参考:
テルモ有価証券報告書
シスメックス有価証券報告書
オリンパス有価証券報告書
日本光電工業有価証券報告書
これらは全職種の平均で、賞与込みの金額です。
子会社などは公開情報が限られているので、口コミ情報などの参考値を見ると良いでしょう。
私が解説している”企業分析シリーズ”の記事にも年収を記載しています。
キャリアパスや成長可能性は?
医療機器メーカーのキャリアパスは、職種内の専門性を深めるか、職種間・部門間を飛び越えてスキルを身に着けていくか(スペシャリストかゼネラリストか)の両方のキャリアを描きやすい業界です。
| キャリアパス例(営業職) |
|---|
| 営業職→エリアリーダー→支社部長 |
| 営業職→アプリケーション担当→マーケティング |
| 営業職→海外営業→海外マーケティング |
海外駐在や海外事業の案件を経験することができるのも医療機器メーカーの特徴です。
また近年ではデータ活用ができる人材の需要が高まっています。実際にプロダクトマネージャー等の求人では、戦略立案~実行・KOL(有力ユーザー)連携・グローバル協業まで担うハイレベル職の募集が出ており、年収も高水準となっています。
・英語読解スキル
・資料作成スキル
・プレゼンスキル
上記スキルの底上げをしている人が将来の選択肢の幅を広げています。
まとめ:難易度は「高め」だが、キャリアを築きたい人は最適な環境
今回の記事で参考にした口コミサイトは以下の2つです。
本格的な就活を始める前に1度使用してみるのもありだと思います。
■転職会議
・会員数約1060万人。国内最大の約510万人の口コミがあり、企業がほぼ網羅されている。
・年収、評価制度、ワークライフ、やりがいなど様々なカテゴリでの口コミが閲覧できる。
・面接、選考に関する口コミもあり、本選考でのESや面接対策としても使える
■Openwork

・企業文化、働き甲斐、残業時間、給与水準など幅広い口コミの投稿を閲覧可能
・UIが見やすい。また、口コミでの評価スコアから企業間の比較も可能。
・学生から転職検討者までユーザー層も幅広く使いやすい。



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