はじめに
「CTは被ばくが多いと聞いたので心配、、」という声をよく聞きます。ですが今のCTは、装置の進歩と撮影方法の工夫により、昔よりぐっと被ばくが下がっています。
この記事では、昔と今のCTの被ばく線量の違いや人体への影響をわかりやすく解説していきます。
CTの被ばくは本当に下がったのか?
医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME)より”診断参考レベル”というCT撮影における線量指標が出ています。J-RIMEは患者の医療被ばくの最適化に向けて活動しており、施設における実際の線量を調査し、指標を作成している団体になります。
この”診断参考レベル”は5年おきに改訂されており、最新版は2025年7月に発表されました。「他施設より高い線量を用いている施設がそれを自覚し、最適化することを推進すること」を目的としています。
ちなみにmGyという単位は吸収線量のことで、人の体を水に置き換えて計算する値です。CT装置には撮影後、何mGyで撮影したか表示されるようになっています。
まずは成人(16歳以上)は以下の通りです。
| 領域(成人) | 2015 | 2020 | 2025 | ’15→’25の低減率 |
|---|---|---|---|---|
| 頭部 | 85mGy | 77mGy | 67mGy | ▼約21% |
| 胸部 | 15mGy | 13mGy | 11mGy | ▼約27% |
| 胸部~骨盤 | 18mGy | 16mGy | 13mGy | ▼約28% |
| 上腹部~骨盤 | 20mGy | 18mGy | 14mGy | ▼約30% |
実際に見ていただくと分かると思いますが、全体的に20~30%ほど被ばく線量が下がっていることが分かると思います。では次に小児ではどうでしょうか。
| 年齢(小児頭部) | 2015 | 2020 | 2025 | ’15→’25の低減率 |
|---|---|---|---|---|
| 1歳未満 | 38mGy | 30mGy | 27mGy | ▼約29% |
| 1~5歳未満 | 47mGy | 40mGy | 34mGy | ▼約28% |
| 5~10歳未満 | 60mGy | 55mGy | 44mGy | ▼約27% |
| 10~15歳未満 | (記載なし) | 60mGy | 55mGy | ー |
| 年齢(小児胸部) | 2015 | 2020 | 2025 | ’15→’25の低減率 |
|---|---|---|---|---|
| 1歳未満 | 5.5mGy | 3.0mGy | 2.0mGy | ▼約64% |
| 1~5歳未満 | 7.0mGy | 4.0mGy | 3.0mGy | ▼約57% |
| 5~10歳未満 | 7.5mGy | 6.5mGy | 4.0mGy | ▼約47% |
| 10~15歳未満 | (記載なし) | 6.5mGy | 5.0mGy | ー |
ここ10年で小児も20%から60%ほど下がっていることが分かると思います。
他の施設がどれくらいの線量で撮影しているか?ということは放射線技師や医師の方は繊細な場合が多いです。
出典:JapanDRLs
ここまで下げられた理由とは?
「ここまで下げてしまうと綺麗な画像がとれているの?」と、今度は別の心配する声が上がるかもしれませんが、そんなことはありませんと断言します。むしろ綺麗になっている場合がほとんどです。
その理由を今から書いていきます。
➀自動で”必要最小限の線量”にする機能の登場
どのCTにも体格に合わせて線量を自動で調整する”AEC”という機能が備わっています。これを使うことで小柄な人はより低線量で撮影することができます。また、最近ではAI技術を用いて撮影の目的に合った範囲だけ撮るように誘導してくれる機能が搭載されている装置もあります。
➁画像の”ノイズ”を抑える再構成(画像を作る方法)の登場
綺麗な画像は”ノイズ”が少ない画像のことを言います。今までは線量を減らせばノイズが増え、線量を増やせばノイズが減り隠れていた疾患が見えるようになるというトレードオフの関係でした。しかし、ノイズ低減に力を入れた方法の登場により、画質を保ったまま今までより線量を下げて撮影することが可能になりました。
③Deep Learning(AI)を使う再構成の登場
AI技術を活用して画像を再構成する方法が開発され、上記のノイズ低減のレベルが格段に上がりました。AIには何がノイズなのかを学習させており、効率よくノイズ低減をすることで40%程度線量を減らしても同じような画質が得られるとの報告もされています。AI技術が搭載されているメーカーとその呼び名は以下のようになっております。
・GE:TrueFidelity(胸部の低線量撮影で画質改善、線量低減の報告)
参考:PubMed
・Canon:AiCE(線量低減と画質向上に関する報告)
参考:Nature
・Philips:Precise Image(低線量条件での画質改善の報告)
参考:MDPI
④余分なエネルギーをカットする工夫(フィルタ)の登場
スズや銀などの金属フィルターを放射線が出る箇所の直下に設置し、診断に不要であった低エネルギー成分を取り除くことで、被ばくの最適化を行う技術です。胸部の検診で低線量で撮影する際に使用され、2.5mGy未満というかなり少ない線量での撮影が可能になっています(普通の胸部の参考レベルは11mGy)。
⑤新世代の検出器:フォトンカウンティングCTの登場
機械の作りの関係上、仕方なくロスしていたX線をムダなく使用できる検出器がフォトンカウンティングCTです。現在販売されているメーカーはSiemens社のみで、装置の価格も高騰ですが、今後普及されることが大きく期待されています。
よくある質問
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低線量だと見落としはありませんか?
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見たいものに合った条件で撮れば、多くの場面で診断に十分な画質が得られます。どの程度の精度差が出るかは部位・病気で異なり一律には言えませんが、前述のAI技術の登場や装置のレベルアップにより、遜色ない画像で診断できるようになっています。
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子供や妊娠中はどうですか?
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被ばくに敏感な時期なので必要性を慎重に判断します。撮影する場合も低線量で最小限にし、成人と比較してもかなり少ない線量で撮影を行います。それでも不安であれば、撮影する目的や代替手段が無いのかといったことをしっかり医師と相談するのが大切です。
まとめ
・昔の撮影よりも現在の撮影の方が被ばくは少なくなっている
・低被ばくを支えるのは、自動調整機能、再構成法、AI技術、金属フィルターなどの技術
・被ばくが少ないからと言って画像が劣化するわけではない。不安なことは医師との相談が必要
最後に、記事に対する感想やこういう情報が知りたいなどあればコメントいただければ幸いです。
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